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フロー計算書の基本

フロー計算書の基本
◆まとめ

直接法キャッシュ・フロー計算書

そして、「キャッシュ・フロー経営」という用語も生まれました。損益計算書上の利益の追求はもちろんですが、“どれだけのキャッシュを稼ぎ出し、フリー・キャッシュ・フローをどれだけ増やすか”を重視する経営です。最近では不正会計を起こした東芝が、「当期利益至上主義を脱却し」、「キャッシュフローに重点を置いた業績評価」に移行すると宣言しました*。
* 東芝 (2015年9月7日) 『過年度決算の修正、2014年度決算の概要及び第176期有価証券報告書の提出並びに再発防止策の骨子等についてのお知らせ 別紙 再発防止策の骨子について』。

また三菱商事は、収益性の高い資産への入れ替えを促進するために、部門別のフリー・キャッシュ・フローを算出し、部門別の現金収支の管理を徹底していくとしています*。
*「三菱商、現金収支の管理徹底 全部門、3カ年で黒字に」『日本経済新聞』2016年6月23日、朝刊。

2 直接法のキャッシュ・フロー計算書

2.1. 直接法と間接法

*1 他には、特別退職金の支払額、役員退職慰労金の支払額、災害損失の支払額、補助金の受取額、補償金の受取額、保険金の受取額、賃貸料の受取額、移転費用の支払額、などの記載事例があります。
*2 他には、無形固定資産の取得による支出(売却による収入)、定期預金の預入による支出(払戻による収入)、敷金及び保証金の差入による支出(回収による収入)、短期貸付けによる支出、短期貸付金の回収による収入、長期貸付けによる支出、長期貸付金の回収による収入、などの記載事例があります。
*3 他には、社債の償還による支出、株式の発行による収入、などの記載事例があります。
*4 フロー計算書の基本 この調整項目も会社によりますが、20項目前後の調整項目があります(次項参照)。

2.2. 直接法のキャッシュ・フロー計算書の長所と短所

(1)直接法のメリット

*1 「キャッシュ・フロー会計情報と企業価値評価―九州地区の中小企業をめぐる実証分析」 税務経理協会 岡部勝成 2010/03 45ページ。直接法と間接法のキャッシュ・フロー計算書の有用性にかかる書籍や論文を渉猟した限りでは、この文献に長所がもっとも網羅的かつ明瞭に書かれているようでしたのでここに引用させていただきました。
*2 IASB(国際会計基準審議会)が2001年10月に審議し、直接法だけを認めました(原則10「キャッシュ・フロー計算書」)。IASBは、直接法だけを認め、間接法を認めない理由を3点あげており、これはそのうちの1点です。要するに当期純利益に対する調整項目が増えてきて、当期純利益と営業活動によるキャッシュ・フローの差額を理解することが難しくなったということです。ある研究で実際に調査すると、当期純利益に対する調整項目は1社平均16.6項目もあり、そのうち2社は24項目もあったそうです。しかもこの調整項目は分類されておらず、配列の順序も一様ではないため、非常にわかりにくくなっているとされます。(鎌田信夫 (2002年) 「業績報告書としてのキャッシュ・フロー計算書–IASB原則書案に関連して」 『産業経済研究所紀要』 第12号 86ページ。)

(2)直接法のデメリット

3 直接法による作成が今まで難しかった理由

将来キャッシュ・フローを予測する点では直接法の方がよいとされながらも、前項のデメリットにより、直接法を作成している企業はほとんどいません。
東証と名証のそれぞれ第一部と第二部に過去11年間継続して上場していて連結財務諸表を作成している企業1,765社中、直接法を採用している企業は1社もありません。*
* 日本政策投資銀行設備投資研究所編 (2015年) 『産業別財務データハンドブック フロー計算書の基本 2015』 日本経済研究所。また、その他の市場まで含めても、直接法を採用する上場会社は10社程度にすぎないそうです。(桜井久勝 (2015年) 『財務諸表分析〔第6版〕』 中央経済社、100ページ)。

その具体的な原因は、多くの企業は損益計算を中心に組み立てられた会計システムを用いており、直接法に必要なデータを収集する会計システムを持っていないためです。*
* 永田靖 フロー計算書の基本 (2010年) 『キャッシュ・フロー会計情報論―制度的背景と分析手法(広島経済大学研究双書)』 中央経済社、91ページ。

4 将来キャッシュ・フローを予測するうえでの有用性

5 フロー計算書の基本 TMSで直接法キャッシュ・フロー計算書を作る意義

(1)利益確定を待たずにいつでも見られる
TMSで作る場合は、インプットが毎日銀行から自動受信する銀行明細になります。したがって、決算による利益確定を待たずして、いつでも前日時点のキャッシュ・フロー計算書を見ることができます。

(2)事業ごと、会社ごとなど、柔軟な切り口で見られる
将来キャッシュ・フローを予測するという観点では、連結によるグループ全体だけではなく、事業別や会社別等のセグメントごとに見て分析をしたいはずです。しかし一般に、セグメント別に当期純利益は算出されていません。TMSでは銀行取引1件ごとを集計して直接法キャッシュ・フロー計算書を作成しますので、その表示する切り口を変えることによってセグメントごとの営業キャッシュ・フロー計算書がいつでも見られることになります。

(3)時系列の比較ができる
決算時点だけでなく、常にキャッシュ・フローが捉えられ、データベースに蓄積されているため、時系列で比較をすることができます。四半期ごとに限らず、月次、さらには週次、日次で把握できます。これは、経営計画や事業の進捗を把握するために時系列に見る時には不可欠なことです。とくに、季節性がある事業や企業には月次、週次推移は特に有効であると思われます。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルを短縮しようとする企業などは、キャッシュの日次の動き、ときには日中の動きも把握して、非常に精緻な管理をしています。

6 TMSによる直接法キャッシュ・フロー計算書の作成方法

6.1. 基本的な作成方法

6.2. TMSで作る場合の制約
TMSからキャッシュ・フロー計算書を作る場合にも若干の制約はあります。

(1)インプットデータ次第であること
銀行から送られてくる明細のデータでキャッシュ・フローを特定します。明細のデータだけでは不十分な場合、入出金予定のデータで補完します(後述)。これらのデータが正しくキャッシュ・フロー計算書の項目と紐づけられるかがカギとなります。キリバでは、データ上のコード(取引コード、科目コード等)だけでなく、摘要欄の文言もその紐づけのキーとして使えますので、ある程度細かく紐づけられますが、その精度は銀行と予測のデータの内容次第であることは否めません。

(2)TMSを導入できる会社が対象であること
取引銀行からデータを自動で取得できない会社は、キャッシュ・フロー計算書を自動で作成することは難しくなります。当該子会社に対する資本構造や支配力等諸般の事情で、その子会社にTMSを導入できない場合や、その子会社からデータを取得できない場合については、同じ仕組み、同じ粒度で直接法キャッシュ・フロー計算書を作成することはできません。持分法適用会社などは容易ではないかもしれません。

6.3. TMSでの具体的な作成方法
TMSでのキャッシュ・フロー計算書の作り方を、キリバを例に具体的に説明します。キリバでは、グローバルの資金ポジションを一覧表示する「資金ポジションワークシート」を使います。いくつかの切り口で表示できるようになっていますので、キャッシュ・フロー計算書の項目で表示させます。

(1)データのマッピング
銀行取引をキャッシュ・フロー計算書の所定の項目に紐づけて表示するために、各銀行取引に以下の手順でコードを振ります。

(図4)予実の基データからキャッシュ・フロー計算書を表示させるまでの流れ

(2)グループ内取引の扱い
連結会社相互間で発生したキャッシュ・フローの相殺消去については、実際にキャッシュの動きがあるので、そのまま表示されますが、入金側はプラスの数字で、出金側はマイナスの数字で表示され、合計は差し引きゼロとなりますので問題ありません。むしろ純額にならず総額で表示される利点があります。グループで見れば相殺され、個社別に見れば、連結会社取引として表示され、特段の相殺等の操作をすることなく、ワークシートの表示条件を切り替えるだけですみます。

(3)「現金及び現金同等物に係る換算差額」の作り方
この項目はキャッシュ・フロー計算書上で、ただ一つの実入出金を伴わない項目です。為替変動による前期末残高との差額を表示するものですが、実入出金を伴わないため、仮想口座を作り、この換算差額を期末時点のキャッシュ・フローとして作り、この仮想口座に入れます。

6.4. 営業活動によるキャッシュ・フロー(小計より上)のモニタリング
以上でTMSによる作成方法を述べましたが、実務面を考えると意味があるのは、営業活動によるキャッシュ・フローのうち小計以上である、「営業収入」「仕入支出」「人件費支出」「その他の営業支出」に限って作成して、モニタリングしていくことがよいと考えます。

キャッシュフローの予測方法

EBITDA(Earning Before Interest, Tax and Depreciation/Amortization)とは、税引前利益に支払利息と減価償却費を加算し計算した指標で、フリー・キャッシュフローに近い概念として、フリー・キャッシュフローの代わりとして簡便的に使用されています。
計算方法には、様々なバリエーションがあり、以下のような計算方法が一般的とされています。
・EBITDA=税引前当期利益+支払利息+減価償却費
・EBITDA=営業利益+減価償却費
・EBITDA=経常利益+支払利息+減価償却費

2.BSとPLから正確なキャッシュフロー計算書を作成する方法

この方法は、上場企業が公表する決算書に添付されるキャッシュ・フロー計算書の作成方法です。キャッシュフローを以下の3つの活動に分類し、キャッシュフローの源泉を明らかにすることができる上、BS(貸借対照表)とPL(損益計算書)から作成するため、正確性が最も高いCF計算書です。
①営業活動CF
②投資活動CF
③財務活動CF
ただし、デメリットとしては、CF計算書の作成にあたり、高度な専門性を要するため、BSとPLとCFの3表のつながりを理解していなければ、完璧なCF計算書を作成できない点が挙げられます。実務では、専門家が関与せずに作成すると、間違いが発生しやすい部分でもあります。

キャッシュフロー計算書の作成のステップ

Step1. 貸借対照表で前年度との差額を算出する
Step2. 営業CFを作成する
Step3. 営業関連資産負債の増減を調整する
Step4. 投資CFを作成する
Step5. 財務CFを作成する
Step6. BSの期末現預金との整合性を確認する

具体例で見てみよう

以下の表は、スタートアップ企業のCF計算書の作成の全体像を示したエクセル表です。表の左側には、2013年と2014年の貸借対照表を示しています。

表の右側には、CF計算書の計算過程を掲載しています。CF計算書は、営業CF、投資CF、財務CFの3つのカテゴリーに分け、それぞれのキャッシュフローの状況を示しています。基本は、BSとPLのデータに基づき、2014年のCF計算書を作成していきます。計算をどのように行うのかを、「CF計算書のステップ」に沿ってみていきましょう。

Step1.貸借対照表で前年度との差額を算出する

Step2. 営業CFを作成する

①営業利益
②+ 減価償却費
③±営業関連資産負債の増減
④-支払利息
⑤-法人税等支払額
営業CF

① 営業利益に関しては、損益計算書からそのまま数字(40)を持ってきます。
また、②の減価償却費についても、損益計算書の減価償却費の金額(80)を使います。ここで、減価償却費は、営業利益に加算することになります。損益計算書上は、費用であるため、利益のマイナス要因ですが、CF計算書上は、プラス要因になります。これは、減価償却費は、現金の支出を伴わない費用であるため、キャッシュフロー(現金の流れ)を計算する上では、営業利益に含まれる費用から除かなくてはならないため、計算上、「営業利益に減価償却費を足す」ことになります。
② 営業関連資産負債の増減については、Step3で説明します。
③ 支払利息は、損益計算書上の支払利息の金額(6)をそのままプロットし、営業利益からマイナスします。
④ 法人税等の支払額は、前期末の未払法人税の金額(10)をプロットし、営業利益からマイナスします。損益計算書上に計上された法人税等の金額は、来期支払われるものであるため、当期に実際に支払った額は、通常、前期末に貸借対照表に計上された未払法人税の金額と一致するからです。(中小企業であれば、中間納付が通常ないため、簡便的にこのような計算を行っています。)

Step3. 営業関連資産負債の増減を調整する

例えば、売掛金が前期末60から当期末67に増えた場合、営業CFに与える影響はどのようになるでしょうか?「売掛金が7増える→回収できない売上が7増える→営業CF上は7マイナスの影響」と考えることができます。どの資産負債項目でも基本的な考え方は同じですが、営業関連資産負債の増減をパターン分けすると、次の4パターンにまとめることができます。
①資産が増える→営業CFにマイナス
②資産が減る→営業CFにプラス
③負債が増える→営業CFにプラス
④負債が減る→営業CFにマイナス

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